前回のあらすじ
宇宙世紀××××年、地球が滅びかけているのを救おうとしたルージュだったが、大統領殺害の犯人としてIRPOに捕まってしまう。これからルージュは一体どうなってしまうのか―――

「何の話だよっ。ほとんどこの世界にからんでないしっ!!」
「あっ、間違えた」

祖国・マジックキングダムを救うべく、ルージュは長老がくれた指輪の兄弟を集めることに。
だが、祖国を旅立つルージュを待っていたのは指輪を集めるための試練だった………。

「それはアンタの話じゃなーいっ!!」
「んじゃあ、こっちは?」

双子であるブルーと喧嘩をしたルージュ。彼はそのことを謝るべく、ブルーの家を訪れた。
しかし、ブルーはその時すでに倒れていた。IRPOに疑われ、ディスペアに送られたルージュだったが、ブルーを殺した犯人に復讐を誓う。

「犯人はどうせアンタでしょ」
「よく分かったね」
「いや、だって現にそうだし。つか、これもアンタの話じゃないし」

悲しき双子対決を始めるルージュとブルー。その勝負に勝ったルージュだったが、そんな彼を貫く剣。流れた血は紫色をしていた。
それを見て、彼は自分達が元々二人で一人だったことに気がつく。
「僕はルージュ……それともブルー?」
ブルーとルージュが一つになっただけに紫の色をした血。この血がルージュの運命を左右することなどまだルージュには分からなかった………。

「いい加減にしろー!!」
斬。
「あいたっ。アニーさん、本気で斬んないでよ〜」
「じゃあ、真面目にやれよ」
ルージュの目の前に剣を突き付ける。
「今のは真面目でしたよ〜」
「途中からアセルスの話っぽくなってたじゃん」
ばっさりと剣ではなく、言葉で斬り捨てるアニー。
ルージュはふてくされたように頬を膨らませた。
「だって、本当のあらすじだと格好良くないんだもん」
「そういう問題?」
アニーは呆れたように言う。
仲良さそうに見えるが、彼女とルージュがここ、ディスペアで出会ったのはつい先程のことだった………。

「……アンタがルージュね。本当に似てるわ、ブルーに」
そう言って彼女はルージュの目の前に現れた。
清掃員の格好をしていたが、彼女が誰だかすぐに分かった。
「アニー、さん………?」
名前を呼ばれたアニーは驚いた顔をした。
「私を知ってるの?」
「えっと、僕がっていうよりはブルーが知ってたみたいなんですけど」
「………どいうこと?」
アニーが睨む。ルージュは困ったような顔をして説明をした。
「僕はルージュです。だけど、ブルーでもあるんです」
「は?」
「あぁっ、僕達は元々二人で一つだったんです。だから僕がブルーの記憶を持っているんですよ。………分かりました?」
どうやって説明をするべきか分かんなかったので、ルージュは適当に説明をしてしまった。
アニーはしばらく黙っていたが、ため息を吐くとルージュの入っていた牢の鍵を開けた。
「えっ………?」
訳が分からずに狼狽えるルージュにアニーは服を投げた。
その服はルージュが捕まる前まで着ていたマジックキングダムの服だった。
「それにさっさと着替えて。囚人服のまま戦うのは大変でしょ?」
彼女はそう言うと、清掃員の服を脱ぎ捨てた。ブルーの記憶に残っている服装になった。
ルージュはのろのろと服を着ながらアニーに尋ねた。
「戦うって言ってたけど、何をするつもりなの?」
「ここから出るのよ」
ようやく、着替え終わったルージュは驚いた。
「そんなことしてもいいの?」
アニーは頷く。
「そうよ。実際、IRPOの隊員を殺した犯人として逮捕されちゃったエミリアもその罪から解放されてここを出たわ」
だが、ルージュは知っている。こういう甘い話には必ず裏があるということを。
「で、条件は?何かあるんでしょ?」
アニーはそれに笑った。
「勘がいいね。その通りだよ。………ここには解放のルーンがあるから、それにタッチすればいいんだよ」
ブルーの記憶の中にここの思い出がある。もちろん、ルージュみたいに捕まって入ったのではなく、ルーンの為にさっきまでのアニーのような清掃員の格好をして潜入したのだが。
ちなみにブルーとアニーが出会ったのはここへ潜入する時だった。
「解放のルーン、ね………」
その名の通り罪を解放し、ディスペアからも解放してくれるルーン。
どうせなら、ブルーも犯罪を犯してここに来れば良かったのに。つまんない。
ルージュは内心そう言ってブルーに毒づいた。
ブルーは特に何も言ってこなかったが。
「分かった。行こう」
どうせ、ここにいてもつまんないだけだし。なら、さっさと出てしまった方が良い。
「じゃあ、決まりだね」
こうして、ルージュとアニーは解放のルーンの所まで一緒に行くことになったのだった………。

そして、今。アニーにブルーとの対決の後から捕まる前までのことを聞かれ、前回のあらすじを言うことになった。
が、最初ので分かるようにルージュは真面目に答えなかった。
アニーは疲れたかのようにため息を吐いた。
「もういい。アンタに期待したのが間違いだったわ………」
出していた剣を鞘に収める。ルージュはつまんなさそうにそれを見ていた。
「ところで、アンタは何で捕まったの?」
その質問にルージュは悩んだ。
「うーん………なんか、思い当たるのがたくさん有り過ぎて分かんない」
その答えにアニーは目の前にあった壁にぶつかった。
「分かんないって………どんだけ悪いことしてんのっ!?」
「僕は悪いことをしてるつもりは無いんだけどね」
にへら、と笑うルージュ。アニーは頭を押さえた。
「………助けない方がリージョン界の為だったかも」
今更ながらに後悔するアニー。
ルージュはそんな彼女を無視して、記憶をあさった。
「うーん。お金を盗もうとしたのは未遂だから、ディスペアに連れて来られる程じゃないでしょ?だったら………」
未遂でも犯罪なんだから充分ここに連れて来られるものだよ、アニーは心の中で突っ込んだ。
すると、突然ルージュが叫んだ。
「あーっ!!分かったぁー!!」
ルージュは嬉しそうに笑って言った。
「きっと、カードのことでここに連れて来られたんだ」
「………何をしたの?」
アニーは恐る恐る尋ねた。
「んっとね、ブルーが印術の為にルーンを集めてたように僕は秘術の為にカードを集めてたんだ〜。それで“色々”あったんだよ」
ルージュはなぜか「色々」を強調して喋った。
なぜか分からないが、ルージュの背後からはどす黒いオーラが見えた。
「杯のカードの時はもらえる酒をたくさん飲んだせいで仲間達を全滅の危機に陥らせたり、金のカードの時は金を渡すのがもったいなかったからノームを暴力で脅したり、剣のカードの時は一緒に行ったゲンさんを一人ワカツに残したままゲートで逃げたり………」
なんだか聞いてはいけないような事を聞いてしまった気がする。
もちろん、気がするではないのだが。
と、そこでアニーはある事に気がついた。
残りの盾のカードは確かIRPOにあったはずだ。もしかしたら、もしかするかもしれない。
「………アンタ、IRPOに何かやったの?」
「うんっ」
にっこりと笑ったルージュが憎らしく思えた。
まさか、IRPOに何かしているとは思わなかった。
しかも、それを忘れていたとはどんな神経をしているのだろうか。
「その時は最後のカードだって浮かれてたから、ヒューズが何か言ってたのを無視して力ずくで奪ったんだよ」
さらりと言ってのける。アニーは体が重くなるような錯覚を感じた。
だが、ルージュのこの悪どさを見たらブルーがなぜ負けたのかが分かった気がした。
「そうやって卑怯な手を使ってブルーに勝ったんだね」
ブルーが哀れだなぁ、とアニーは内心そう思った。
が、返ってきたのは意外な答えだった。
「そんなことないよ。ちゃんと僕は魔術勝負でブルーに勝ったんだよ」
今までのことを聞いていたアニーだったので、ルージュのその言葉を信じられなかった。
「………まぁ、でも時術の空間になった時にオーヴァドライヴを使って時を止めて、その後に“色々”やったんだけどねぇ」
やはり、何かしらをやっていたようだ。ただ、魔術勝負でオーヴァドライヴを使うのは別に反則でもない。
それよりも、今回もまた「色々」を強調したということは、また何かしでかしたということだ。
「実はねぇ―――」
そうルージュが言いかけた瞬間、ルージュは意識を失ったかのように目を閉じた。
「ルージュっ!?」
アニーは慌ててルージュに駆け寄る。
ルージュは駆け寄ってきたアニーを手で制すると、ゆっくりと目を開けた。
それはルージュとよく似ているが、また違った雰囲気を持つ人物だった。
「………ブルー、なの?」
アニーが自身無さ気に尋ねる。
その人物はルージュよりもつり目がちな目でアニーを見た。
「アニー………か」
共に戦った仲間を懐かしむかのようにアニーを見るブルー。
アニーは自分が知っているブルーと違うので少しだけ戸惑った。
「どうかしたか?」
じっとブルーを見るアニーを不審に思ったのか、ブルーは尋ねた。
その反応が、自分の知っているブルーだったのでアニーは安心し、首を横に振った。
「………なんでもない。ただ、今さっきブルーじゃないような気がしただけ」
「なんだそれは」
ブルーはこれといって追求などはしなかった。
「それにしても、何でブルーが出てきたの?ルージュはブルーの記憶以外にブルー自身も持ってたの?」
「持つという表現はやめろ」
本当に嫌そうにブルーは言った。
アニーはかわいそうだったので言うのをやめることにした。
「で、どうなのよ?」
質問の答えを促す。
「………俺とアイツが元々二人で一つだったというのは聞いたから知ってるだろう?元々一つだったなら、一方が消えれば生きてる奴に吸収されて一つになる」
アニーはようやく全てを理解した。
「つまり、負けたブルーの記憶も手に入れた資質もブルー自身さえも、全部勝ったルージュに吸収されたってわけ?」
ブルーが頷く。だが、顔は苦々し気だった。
「そういうことだ。双子がキングダムで最強と謳われるのは、一人に相反する資質を身につけることはできないが、二人が違う資質を身につけて一つになれば全ての資質を身につけることができるからだ」
今のブルーは、いやルージュは全ての資質(とは言っても、幻術や邪術や妖術は資質を身につけていないのだが)を身につけているということだ。
「………だが、その事実を知った時、キングダムが何を考えているのか分からなくなった」
元々一つだったものをなぜわざわざ二つに分けたのか。
そして、なぜ殺しあわせてまで最強の魔術士を作りたかったのか。
「俺はキングダムの意図が知りたかった。だから、キングダムに帰るようにアイツに言ったのに、あろうことか無視して違うところに行きやがった」
色々と溜め込んでいるせいなのか、ブルーの口調が変だった。
そして、日頃ルージュに言いたかったことを言いだした。
「大体、アイツは人の話を聞かなさ過ぎなんだ。俺の声が聞こえてるはずなのに聞こえてない振りはするし、犯罪に手を染めようとしてるし、人をよく騙すし。そのうえ、魔術勝負を真面目にやってると感心してたら、オーヴァドライヴを使って時を止めるし。そこだけならまだ許せたが、アイツは卑怯にも姑息な手を使うし、それをかつての仲間に話そうとするし―――」
「………話されたくないからルージュの意識を乗っ取って出てきたんだ………」
アニーは呆れたように言った。
ブルーでもさすがにルージュは苦手なようだ。それが二つに分けられてる時ならまだしも、一つになって記憶やら何やら見られるのだから尚更だ。
特に弱点というか、嫌なことを見られたらもう終わりだ。
ルージュ恐るべし、アニーは心の中で呟いた。

あの後、アニーは散々ルージュに対する愚痴を聞かされた。
それが終わった今は解放のルーンを取りに行くのを再開していた。
ブルーは一回来ているのでそこまで詳しい案内は必要なかった。
ブルーはゴムで長い髪を一つに結っていた。
これで服装がブルーのなら、絶対に体がルージュの物だとは思えなかっただろう。
行く道を塞ぐ敵を片っ端から倒していき、ようやくルーンのある部屋の近くまでやってきた。
「そこで見張ってて」
アニーはブルーにそう言うと、鍵を外しだした。
ブルーは前に来た時にも同じことをやったので、特に何も言わなかった。
「よし、終わりっ!!」
「………そうか。なら、こっちを手伝ってもらおうか」
「えっ………?」
アニーがブルーの方を見ると、ブルーの目の前には敵がいた。
敵はブルー達に気付くと、いきなり襲い掛かってきた。
ブルーは一つため息を吐くと、呪文を唱え始めた。
アニーも腰に収めている剣を鞘から抜き出す。
そして、戦いだそうとした時だった。
「なっ………」
ブルーの呪文が途中で途切れた。アニーはブルーを見る。
『………何で好き勝ってするかなぁ?この体は―――』
ブルーの意識が途切れ、本来の体の持ち主に変わる。
「僕のだって言ってんだろうがぁっ!!」
ルージュは髪を結んでいるゴムを外すと、呪文無しで術を発動させた。

「くらえっ!特大級ヴァーミリオンサンズっ!!」

ぶちギレたルージュのヴァーミリオンサンズをもろにくらった敵は跡形もなく、粉々に消え去ってしまっていた。
攻撃力は通常の倍はありそうだ。
アニーは感心した。
「ルージュ、今のすごかったよ」
「本当はブルーにくらわせてやりたかったけどね」
刺のある言い方をするルージュ。まだまだ子供らしい。
「じゃ、先行くよ」
アニーはルージュにそう行った。
が、ルージュはその場に立ったまま動こうとしなかった。
「ルージュ?」
アニーはルージュの見ている先を自分も見た。
すると、そこにはヒューズが立っていた。
「ふっふっふっ。お前を簡単にここから出すと思っているのか?」
なんというか、ここまでしてくるほどカードを奪われたのが屈辱的だったのだろうか。
「アニーさんは先に行ってて下さい」
「でも、相手はIRPOだよ」
「大丈夫。すぐに追いつきますよ」
ルージュは自信満々に笑う。
いろんな意味でアニーは心配だったが、自分がここにいても邪魔だろうと考えた。
だから、ルージュに軽く頷くと先にルーンのある部屋に向かった。
「良かったのか?行かせて」
「あなた一人なら僕だけで充分です」
にっこりと笑って言うルージュ。その言葉にヒューズは怒った。
「いい度胸だ。そう言ったことを後悔させてやる」
指の骨をボキボキと鳴らす。
「いくぜっ!!」
「あっ―――――」
ヒューズが殴りかかってくる瞬間にルージュはヒューズの後ろを指差した。
だが、ヒューズは後ろを振り向かなかった。
「そうやって、はめようたってそうはいかないぜ」
そう言って、ヒューズはルージュの顔を殴ろうとした時――――――
「後ろでドールさんが睨んでるけどいいの?」
その言葉にぴたっと拳がルージュの眼前で止まった。
ルージュは更に言葉を繋いだ。
「しかも、ハンドブラスター構えてるよ」
ヒューズの額から汗がダラダラと落ちていく。
ルージュはぽん、と肩を叩いた。
「………謝るなら今のうちだと思うけど?」
ヒューズはルージュの顔を見る。ルージュはにっこりと笑っただけでそれ以上何も言わなかった。
「………くそっ」
悪態を吐くと、ヒューズは拳を降ろした。そして、後ろを振り返った。
その瞬間、ルージュは悪魔の如く笑った。
「時間蝕〜」
「なっ……………」
ヒューズは慌てて振り返ったが、一歩遅かった。
ルージュは術をヒューズにかけた。そして、ヒューズは何か言う前に石化してしまった。
ルージュは勝ち誇ったように笑う。
「しばらくそこにいてね」
そう言って、ルーンのある部屋にルージュも向かった。

ルーンにタッチしたルージュは無事にディスペアから出ることができた。
が、ヒューズが無事にディスペアから出られたかと聞かれるとそれは分からない。
そんなこんなで、ディスペアから出たルージュはアニーについていき、クーロンにやってきていた。
「ここは?」
「イタ飯屋。会わせたい人達がいるんだ」
そう言って、イタ飯屋のドアを開けた。
中に入ると、そこにはたくさんの人達がいた。
それはルージュの仲間からブルーの仲間までいた。
「………これは?」
ルージュはアニーを見た。
それにアニーは笑って答えた。
「ルージュの仲間からはアンタを助けてって依頼されたんだよ。んで、ブルーの仲間は元々久しぶりに会うことになってたんだ」
これだけの仲間を見てルージュは、ブルーは心が暖かいものでいっぱいになった。
「ルージュっ!!」
ルージュの元に駆け寄ってきたのはアセルスだった。
彼女は嬉しそうに笑った。
「捕まったって聞いたから、今度は何をしたのかずっと心配してたんだからね」
「……アセルス、それは違う心配じゃない?」
ルージュは呆れたように言った。が、別に何の心配でも構わないのだが。
「で、今度は何をやったんだ?」
ゲンが酒を飲みながら尋ねてきた。
それにルージュは簡単に説明した。
「かくかくしかじか」
「分かるかっ!!」
ゲンに本気でミリオンダラーをくらわせられた。
が、ルージュはなんとか避けていたので生きていた。
「漫画とかではよくこれで通じるんだけどな〜」
『それは漫画だからだっ!!』
ゲンとアセルスの二人に突っ込まれた。なんというか、自分のぼけにここまで突っ込んでくれると嬉しかったりする。
「……それにしても、ルージュとブルーって似てるよな〜」
リュートがじっとルージュを見て言う。
そんなリュートを見て、ルージュはあることを思いついた。
「………そうだっ!!ここにいるブルーの仲間の皆さん、君達にブルーの最後を話そう!!」
その言葉を言った瞬間、ブルーが騒ぎだした。
『お前はまたそうやって人の聞かれたくないことをぺらぺらと―――』
『いいじゃん。ブルーと一緒に行動してた皆にはブルーの最後を知る権利があると思うけど』
ルージュの言葉にブルーは一瞬静かになったが、また喋りだした。
『最もらしい事を言って、ただ自分が楽しみたいだけだろうが』
『うん』
『即答っ!?』
ルージュのこういう自分の気持ちを隠さないところは良いのだが、ブルーとっては最悪だった。
『そういうわけで、少し黙ってて』
そう言うと、無理矢理会話を終了させた。
ブルーが何か言っているが完全に無視した。
「あんね、オーヴァドライヴで時間を止めた後にブルーの体を高い所に置いといて、時間が動きだした瞬間、下へ真っ逆さ―――」
「だぁーっ!!」
ルージュが全部言い終わらないうちにブルーが表に出てきた。
そして、ルージュの言葉を打ち消すかのように叫んだ。
だが、事情を知らない人達にとってはルージュが一人で喋って、突然叫んだようにしか見えなかった。
ただ一人アニーだけがブルーだと気が付いた。
「まーた出てきたの?ブルー」
その言葉にこの場にいた誰もがブルーをまじまじと見た。
ブルーは機嫌が悪そうな顔をした。
「じろじろ見るな。鬱陶しい」
そっぽを向くブルー。
皆は訳が分からずにブルーに説明を求めた。
「どういうことだぁ?」
リュートが酔いながら尋ねた。
ブルーはめんどくさそうにため息を吐いた。
「かくかくしかじかだ」
説明を省略した。
だが、ルージュのように突っ込むことは誰もしなかった。
「んーと、とりあえずブルーはルージュの中で生きているってことで良いんだな?」
リュートは適当にまとめた。まぁ、説明不足の割りには以外にちゃんとまとまっているのだが。
ブルーはそれに頷くと、周りを見渡した。
「………懐かしいな」
そこまで時間は経っていなかったが、かつての仲間が懐かしく思えた。
かつての仲間はブルーのそんな顔を初めて見たので驚いていた。
「みんなに頼みがある。………ルージュや俺自身について詳しく知りたい。その為にはマジックキングダムに帰らなければならない」
ブルーが頭を下げた。みんな、それに更に驚いた。
「だから、俺と一緒に来てほしい」
あのプライドの高いブルーが頭を下げたということは、それだけ大切な事だということだ。
それを見て、断れる人などいなかった。
「分かったぜ。だから、頭を上げろよ〜ブルー」
リュートがみんなを代表して返事をする。
ブルーはルージュの仲間にも尋ねる。
「お前達はどうするんだ?」
「どうするって言われてもねぇ………」
アセルスはもったいぶるように喋った。
「私はルージュにいろいろ助けられたから恩返ししたい。………アンタの体はルージュの物だからね」
どうやら、ルージュの仲間も同じようだった。
ブルーはみんなを見て、息を一回軽く吸うと術を使った。
「ゲート」
この場にいた全員を連れて、ブルーはマジックキングダムへと向かったのだった………。


続く。

 

 

 

 

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