満月が闇の中からこちらを見下ろす。これから始まる事を見守るかのように……。
 あるいはこの先の俺達の行く末を示しているかのように………

「……さぁ、始めようか」
 声のした方へ振り返れば、そこには自分と同じ顔をした人物が立っていた。彼の長い髪は結ばれてはおらず、風に吹かれていた。
 お互いに譲らず、また譲ることができなかった。 
「俺は小さい頃からおまえを殺すことだけを考えてきた」
「それは僕も同じだよ。…僕達、双子にしては違うことばかりだったけど、これだけは同じ意見だったね」
 そんなことを言うとにっこりと微笑む。なんだか俺が笑ったみたいで気持ちが悪い。
 俺はコイツの全てが気に入らなかったが、特に人好きのする笑顔が気に入らなかった。俺にとって人というのは利用するための道具にすぎない。
 一方、コイツにとって人というのは一緒に戦う仲間なのだ。それが一番気に入らない。
 だが──―
「それも今日で終わりだ……」
 俺の言った言葉の意味が分かったのか、それとも違うのか分からないが俺の片割れ――ルージュは軽く頷いた。
「もう引けない所まできてしまったからね。    
―――もし、僕達がキングダムで生まれた双子じゃなかったらこんなことにならなかったのかな?」
 珍しく弱気なことを言う。戦いたくないとでも言うかのように。
「今更そんなことを言っても何も変わらない。……これが俺達二人の運命だと思うしかない」
 この言葉は誰に対してのものなのか。目の前にいるルージュに対して?或いは自分に対して?
「そうだね。……ブルー、僕は手加減しないよ」
 穏やかだった気配が今では別のものに変わっていた。
 膨れ上がる魔力、睨み付けるような瞳。完全に戦闘態勢だった。
 こちらも負けないように戦闘態勢になる。
「それはこちらの台詞だっ!!」

 この二人の悲しき運命の対決の結果は月のみぞ知る………

 

 

 

 

inserted by FC2 system