双子同士で殺しあうことを宿命づけられていた自分。
その為に術の資質を手に入れることになり、リージョン界を飛び回った。
陽術の資質を手に入れる為にルミナスに立ち寄ったのは、ほんの偶然に過ぎなかった。
――――ようは、ただの気まぐれだ。
けれど、その気まぐれを起こさなければ彼女に会うこともなかったのだろう。
人間の血と妖魔の血を持つ、あの半妖の少女に………。


「………ジュ、………て」
優しく僕は揺さぶられた。
少女特有の中に強さが混じった声。
―――あぁ、もう朝か。
僕は覚醒した頭でぼんやりとそんなことを考えていた。
その瞬間――――――

「起きろって言ってるでしょうがぁっ!!」

無理矢理、布団を奪われた。
寒い、朝独特の風が僕の肌をひんやりと撫でていく。
そして、目を開けたその前には怒った顔をした緑髪の少女が立っていた。
「あ、おはよう。アセルス………」
このアセルスと呼ばれた少女こそ妖魔と人間の、世界でたった一人のハーフ、半妖の少女である。

「全く………ちょっと最近、だらしないんじゃない?」
半ば説教気味にそうアセルスは言った。
僕は苦笑すると言い訳じゃないけど、弁明することにした。
「なんかさ、次資質を手に入れたらみんなとさよならか………って思っちゃって」
その言葉を聞いたアセルスは目をぱちくりさせると、まじまじと僕の顔を見た。
「ルージュ、資質を全部手に入れたら私達とさよならしようとしてたの?」
「え、えーっと………」
逃げ腰になる僕。
無言の圧力をかけてくるアセルス。
当然、僕は降参するしかなかった。
「……さよなら、っていうか………僕は元々資質を集めてて、それをアセルス達が手伝ってくれるって言ってくれた。だから、普通は資質集めが終わったら別れるでしょ?」
「ルージュ」
アセルスの声が今までのどれとも違い、悲しそうな声になった。
「私達、仲間でしょ?仲間だったら、例え資質集めが終わっても一緒にいるのが当たり前だよ………それに私達の旅はあてがないんだし」
「アセルス………」
僕は彼女に弱い。もちろん、いろんな意味を含めてだ。
だから、アセルスにそう言われると困ってしまう。
これが何もなかったらいいのだ。僕は何にも躊躇わないでアセルスの言うことに従う。
だけど、今回はそうもいかないのだ。
資質を全て集め終わった時、それは僕と僕の片割れが戦う時なのだから。
そして、どちらかが消える運命なのだから――――――
「ルージュ様、アセルス様のことは気にしなくていいのですよ?」
優しくそう言ったのは白薔薇姫だった。
彼女はいつも誰に対しても優しい。
逆にそれが苦しい。
「そう、ですね………とりあえず、考えておきます」
僕は言葉を濁す。
アセルスが何か言いたそうであったが、結局何も言わなかった。

最後の資質を手に入れたら、僕はみんなに黙ってブルーの所へ行こうと考えていた。
……どうしても、自分が何をしようとしているのかアセルスに知られたくなかった。
それを知ったら彼女はきっと僕を軽蔑するだろう。
だけど、僕が何より恐れるのはアセルスに嫌われてしまうことなのだ―――――

しかし、事態は僕に都合良く急展開した。
全ての資質を集め終わった後、それは起こった。
アセルスが何かから逃げているのは知っていた。何から逃げているのかもなんとなくではあったが気づいていた。
そして、今回それが直接手を下してきた。
闇の迷宮という、何か大切なものを犠牲にしなければ出られないという場所に閉じ込められたのだ。
その時犠牲になったのはアセルスの一番大切な人、白薔薇姫だった。
無事に迷宮から出られた後、アセルスはずっと泣いていた。
泣いて泣いて泣いて―――泣き続けた。
見切りをつけたのか、イルドゥンさんはアセルスを一人そこに置き去りにした。
僕はこれでアセルスにお別れも告げずにブルーの所へ行ける………。

「おい、キサマどこへ行く?」
僕がどこかへ行こうとしているのがばれたようで、イルドゥンさんがそう尋ねた。
「………僕は行かなきゃいけない所があるんです」
「アイツに挨拶も無しでか?」
イルドゥンさんが言う“アイツ”とはアセルスのことだ。
僕はちょっと困ったように笑うと言った。
「アセルスに余計な心配させたくないんです。………イルドゥンさん、アセルスに僕のことを忘れるように言っといて下さい」
「待て」
イルドゥンさんが僕の肩を掴んで引き止めた。
「お前までいなくなればアイツは壊れるぞ?」
その、言葉に。
僕は自分でも何とも言えない表情を浮かべた。
「大丈夫ですよ。……アセルスは僕がいなくても大丈夫なんです」
そう言って、イルドゥンさんの手を振り払った。
イルドゥンさんが何かまた言う前に僕はゲートを使ってその場から去ったのだった………。

僕がアセルスを求めているのか、それとも僕がアセルスに求められているのか――――――


→あとがき
何が書きたかったんだ、自分………。
意味不明ですみませんでした。
一応、ルーアセです。
もしかしたら、続くかもです。だって、これじゃさすがに分かりませんもんね。
では、これにて失礼。

 

 

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