「レイナス、ちょっと待って」
ニアにそう言われ、レイナスは歩みを止めた。
小走りで近づき、ニアはレイナスの腕を見た。
「やっぱり………」
「?どうかした?」
何が何だか分からないレイナスはそうニアに尋ねた。
「後ろから見てたら、この傷が目に入ったのよ」
そう言ってから、ニアはレイナスに自分の腕を見るように言った。
レイナスが見てみると、何で今まで気づかなかったのか分からない程、深かい傷を負っていた。
そして、自覚すると共に腕に鈍い痛みを感じた。
「っ―――――」
ズキズキと痛む傷に、ニアがそっと優しく手を置く。
「癒しの光」
ニアがそう呟くのと、光がレイナスの腕の傷を覆ったのは同時であった。
その暖かい光に触れているうちに、腕の傷の痛みが和らいでいった。
「ありがとう。助かったよ、ニア」
「ううん、気にしなくていいわ」
にっこりとニアは微笑む。
レイナスはニアを見ていたが、しばらくして周りの景色に視線をやった。
その目はどこか遠くを眺めているようだった。
「……今回のことだけじゃない。俺は気絶してたからベルンハイムに聞いただけだけど、ニアと初めて出会った時もニアは俺を助けてくれた」
全てが始まったあの時。
仲間と共にエルディアの政府とクラウディアを賭けた戦いが始まったあの時。
レイナスはニアによって命を救われたのだ。
もし、あの時ニアが助けてくれなかったら自分はここにいなかっただろう。
そして、親友であるロナードもザマに操られたままだったかもしれない。
そう考えると、ニアには感謝してもしきれない程の恩がある。
「……あの時は傷ついているレイナスを放っておけなかったし、それに………」
「それに?」
レイナスはきょとん、とした顔でニアを見た。
ニアはしばらくの間黙っていたが、ふいに口を開いた。
「あの時のレイナスから、光が見えた気がしたから………」
「光………?」
「えぇ。希望の光よ」
そう言って、穏やかに笑う。
「そして、私の目に狂いはなかった。……あなたがいなければ、きっとこの空に……ううん、クラウディアだけじゃない。エルディアも平和にならなかったかもしれない」
ニアは眼下に広がる空を見た。いや、空だけじゃなく、その下のエルディアをも見通しているのだろう。
「二つの世界が平和になったのは俺だけの力じゃないよ。……ニア達がいたからだよ」
そう言って、レイナスはニアを見た。
ニアもレイナスを見つめる。
「本当にニア達に会えて良かった。つらいこととかいっぱいあったけど、それでもみんなと出会えて良かったと思う」
親友との戦い、仲間の危機を助けてやれないもどかしさ、敵の強大さ。
どれも大変だったし、つらかった。
それでも、今となってはそれもいい思い出となっている。
ニアもレイナスの言葉に頷く。
「私もみんなと出会えて良かった。……みんなと笑いあえるから」
そして、笑う。
「………それに、レイナスの傍にいられるから」
そう、言われて。
レイナスは驚いた顔でニアを見た。
「えっ?えっ???」
顔を真っ赤にし、慌てふためくレイナスを見て、ニアは何も言わずにくすくすと笑っていた………。


終わり


→あとがき
授業中に終わらせました。
なんか、何が書きたかったのか数分前の自分に問いかけたい。
一応はレイニアを目指したんですけどね。まぁ、一応なので、判断は見てる人にお任せします。

では。

 

 

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