「悪かったわね。こんなことに付き合わせちゃって………」


そうシェラザードが目の前にいるオリビエに言うと、彼はニヤリと笑う。


「ふふ、気にしないでくれ。僕はシェラ君の頼みなら喜んで引き受けるのだから」


二人は今、とある場所で開かれたパーティに参加していた。
そのため、いつもの服ではなく、きちんと正装した格好をしている。
なぜ二人がパーティに参加しているかというと、それはつい先日にまで遡る。
王都グランセルで仕事をしていたシェラザードに軍から正式な依頼がやってきた。
それはとある場所で開かれるパーティに不穏な動きがあるので調査をしてほしいというものだった。
もちろん、シェラザードは依頼を引き受けたのだが、そこには一つ問題があったのだ。
パーティの招待状――どうやって手に入れたのかは知らないが――を受け取ったものの、それは男女一組が参加しなければならないというものだった。
シェラザードは知り合いの男遊撃士に協力してもらおうかと思ったが、どうやら皆忙しく、協力はしてもらえなかった。
困ったシェラザードは、そこである男に協力してもらうことにした。
そして、それがオリビエだったのだ。


「……ところで、シェラ君。なぜ、僕に協力を求めたのだい?」


オリビエはグラスに入っていたワインを飲み干し、頬を朱に染めながらそう問うた。
シェラザードはワインを飲むのを止めて、オリビエをじっと見つめてからにっこりと笑った。


「……だって、アンタって黙ってればパーティにいても違和感ないじゃない。一応、帝国の皇子なんだし」
「またまた〜!本当は僕と甘い一時を過ごし………すみません」


冗談を言い始めたオリビエをにっこりと威圧をしてやれば、オリビエをすぐに謝りだした。
それに満足すると、シェラザードはいつの間にか空になったグラスをテーブルに置き、ワインの入った新しいグラスを手にする。
―――その時、突然オーケストラが始まりだした。
すると、周りで食事などをしていた人達が食後の運動をするかのように曲に合わせて踊り始めた。


「……柄ではないが、シェラ君の期待には応えなくてはね」


そう言うや否や、オリビエはシェラザードの前に片膝をついて座った。
シェラザードはそのオリビエの突然の行動に驚く。


「ちょっ………オリビエ?」
「踊っている人達に紛れた方が不審がられることなく、いろんな人達を観察できると思うんだ。……だから」


そこまで言うと、オリビエはシェラザードに右手を差し出した。


「シェラ君、僕と踊ってくれないか?」


いつものふざけた表情ではなく、真剣そのものな表情。
それにシェラザードは一瞬呆気に取られたが、しかし笑ってその手を取った。


「……その案に乗ったわ。でも、こういう踊りは苦手だからリードは頼んだわよ」
「ふっ、もちろんだよ」


そう言うと、互いに握りあった手を上にあげ、空いているもう片方の手は相手の腰へと回した。
踊る準備ができると、二人はすぐに踊り始めた。


周囲に溶け込みながら踊る二人。
しかし、二人にとってはどこか周囲から切り取られた世界のように感じられた………。










→一言
10000打企画を終了してから1ヶ月以上経っているのに、なかなか話を書けないで申し訳ありませんでしたっ!!
藤泉様からリクエストを貰えて嬉しかったのに、二次創作のブランクを言い訳に今日までリクエスト小説を渡すのをズルズル引き延ばしてすみませんでした。
これで素晴らしい話だったらお礼も兼ねられるのですが………いかんせん、駄文ですみません。
でも、受け取っていただければ幸いです。


では、本当にリクエストありがとうございました!
 
 
 
 

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