空が平和になってから十数年後、カイゼルシュルト城にて一人の男が部下達に命令を下していた。
彼は空を救った英雄の一人であり、また人当たりが良い為部下達から尊敬されている。
一通りのことを命令し終わると、「じゃあ、解散」という彼の言葉で部下達はそれぞれの仕事の為に散った。


「部下に命令している姿、すっかり板についてきたわね。レイナス」
「ライか………」


気配もなく現れた女性―――ライにそう言われ、レイナスは思わず苦笑した。
ライはレイナスの隣に立つと、徐に口を開く。


「……正直、貴方が昇進の話を受けるとは思ってなかったわ」


ライがそう言うと、レイナスの表情が真面目なものになる。


「……本当はさ、昇進の話を聞いた時、俺には荷が重いから断ろうと思ってたんだ。でも――――」


『それはお前が望む数だけさ』


断ろうとした時に思い出したのはいつかの言葉。
この先どれだけの人を救えるのか、そう空に問いかけた時に返ってきた言葉。
それを思い出した時、改めて自分がどれだけの人を救いたいのかを考えた。
考えて考えて考え抜いた結果―――――


「この空に生きる人達を救うなら、荷が重くても昇進を受けるべきだって考え直したんだよ」


今でもその選択が正しかったのかは分からない。
けれど、悩み続けるよりも今自分にできることをすべきだとそう思った。
自分の望む数だけの人々を救う為に―――――


「貴方が昇進を受けた時、ロナードが貴方らしいと言っていたけれど……今なら私もその意味が分かるわ」
「えっ………?」


ライの言葉にレイナスは驚くが、ライは気にせずそのままその場を後にしようとする。
しかし、数歩歩いた所で何かを思い出したかのように立ち止まり、レイナスの方を振り向いた。


「……そういえば、ロナードが『あまり根を詰めすぎるな』って言ってたわよ」


それだけ言うと、今度こそライはその場を去ってしまった。
一方、一人残されたレイナスは親友からの一言に思わず「アイツらしい」と苦笑したのだった………。








→あとがき

レイナス収穫祭用に書いたSS、如何でしたでしょうか?
時間軸はフロンティアとなっている為、レイナスが偉くなっています(笑)
ちなみに、ライを登場させたのはフロンティアにて二人が一緒にプレイヤーと戦うと言ってたからです。
本当はこれではなく、別のギャグ話を予定していたのですが、締め切り何日か前に急遽変更してこれになりました。

皆様の素敵なイラストや小説の中に自分の話が混じってもいいのか不安ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
 
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