「ドモラ少佐、一つ聞きたいことがあるんですけど………」
レイナスは歯切れの悪い喋り方で、そう口を開いた。
それに、ドモラは豪快な笑いを上げて応えた。
「どうかしたか?レイナス」
「えっと、少佐がカイゼルシュルトの軍服の下に着ている………」
「レイラが作ったTシャツのことか?」
「えぇ、それです」
レイナスがドモラの言葉に頷くのと、レイラがレイナスの首に自身の武器を近づけたのはほぼ同時であった。
レイラの殺気を感じたレイナスは固まる。
「レイナス、何かドモラTシャツに不満があるのか?」
声はいつもより冷静(むしろ、冷たい)であった。
レイナスは誤解を解くために、命を救うために慌てて弁解した。
「そういうことじゃなくて、気になることがあるんですよ」
「気になること………?」
レイラがレイナスの首に近づけていた武器を下ろしたので、レイナスは思いっきり頷いた。
「そうです。……2と3では、ドモラ少佐とレイラさんの家でそれが手に入ったけど、1だと神の塔とアルペイトケイブで手に入るんですよ」
しばらく黙って聞いていた後、レイラは口を開いた。
「それがどうかしたか?」
その口振りからすると、レイラは全くレイナスが言いたいことを理解していないようだった。
レイナスはその先を言う。
「あのですね、神の塔にそのシャツがあるのは分かるんです。ドモラ少佐が俺達を助けるために魔獣と戦った場所ですから」
そこで、レイナスは人差し指を顔の前で立てた。
「しかし、なんでエルディアの、しかもドモラ少佐が行ったことのないアルペイトケイブにそのシャツがあったんでしょうか?」
レイナスのその言葉に、場が黙り込む。
しばらくしてから、ようやくヴァイスが口を開いた。
「確かに、言われてみれば謎ですね………。ドモラさんかレイラさんは心当たりないんですか?」
ヴァイスの問いに二人は首を捻る。
だが、しばらく考えているとレイラは何か思い当たることを思い出した。
「……そういえば、洗濯して外に干していたら1枚シャツがなくなっていたな」
「……まさか!!」
ヴァイスが何かを思いついたらしい。
呆れた顔をしながら、ヴァイスは状況をうまく呑み込めていないみんなに説明した。
「多分ですけど、その時干していたシャツが風か何かで下のエルディアに落ちてしまったのでは?……そして、そこがちょうどアルペイトケイブだった。……そう考えるのが妥当かと思います」
黙って聞いていたハントが質問をする。
「けどよ、カイゼルシュルトからアルペイトケイブまでかなりあると思うぜ」
「私達がフューゼを倒した時はエアゲートからアルペイトケイブに行ったでしょ?」
「……つまり?」
ニアの説明がよく分からなかったのか、ハントは更に説明を求める。
そんなハントの問いに答えたのはラナだった。
「つまりね、おじさま。エアゲートは場所のリンクみたいなものだから、エアゲートがあった場所が必ずしもアルペイトケイブじゃないってことだよ」
ラナはそう言ってから、ハントの腕に抱きついた。
ハントは困ったような、照れたような顔をして言った。
「ってことは、やっぱりヴァイスが言ってた説が正しいんじゃねぇか?」
「……そうだな。それが一番妥当な答えだよな」
そう納得しながらも、レイナスは腑に落ちなかった。
が、今更真実は分からないので結局は諦めることになったのだった。


終わり


→あとがき
疑問に思っていたものをネタにしました。
実際、なんでアルペイトケイブにドモラTシャツがあったんでしょうね?
知っている方がいたら教えてもらいたいです。

 

 

 

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