小さい頃からずっと、ニアを守るのは自分だと信じてきた。
だから、ニアを助けるために空の世界であるクラウディアまで行った。
けど。
本当に俺がニアを守るのだろうか。
それが分からなくなった。
彼女の笑顔を見てしまった時から―――――

「ニア、すまない。お前を…守ってやれなかった」
アウルを倒し、ニアの無事を見た途端、ザードの口からふいにそんな言葉が出てきた。
良かったという想いと共に、守れなかったことへの後悔があったからだ。
「ザード…あなたの声はちゃんと届いてたわ。だから、大丈夫よ」
ニアはそう言って笑った。
ニアの笑顔を見て安心したのか、ラナが泣きだしてしまった。
「……お姉ちゃん………」
「心配かけたね、ラナ」
ニアはラナの体を抱き締めて、頭を撫でた。それに、ますますラナは泣いてしまった。
みんながみんな、ニアの無事に喜んでいると入口の方から男の声が聞こえた。
「ニアっ!!」
その声にニア、それにハントやヴァイス、ロナードでさえ嬉しそうな顔をした。
ザードが声の主を見てみると、そこにはカイゼルシュルトの軍服を着た青年が一人立っていた。
「レイナス……」
しばらくニアはレイナスと呼んだ青年を見ていたが、すぐにレイナスのもとへ走りだした。
それにヴァイスやロナード、ゆっくりとだがハントも続いた。
「ったく、今頃かよ」
「遅いですよ」
ハントが軽口を言い、ヴァイスが嬉しそうに笑いながら文句を言った。
「すまない。バーデルゼンの復興が思ったより長くなったんだ。……それにしても」
レイナスはそう切り出し、ニアを見た。
「ニアが無事で良かった。これで、もうつらい思いをしなくて済むんだな」
「レイナス………」
ニアの目がどことなく潤んでいたが、顔はすごく嬉しそうに微笑んでいた。
その、笑顔を見て。
ザードの心はずきり、と痛んだ。
鈍く、重く。
「ラナ」
「?」
泣き止んだものの、まだ目が赤いラナにザードは声をかけた。
「ちょっと風に当たってくる」
「え、ちょっ……」
ラナが制止するのを聞かず、ザードはその部屋を後にした。

空はいつ見ても穏やかだった。
透き通るような青。
まるで、何もかもを忘れてしまいそうな程きれいだった。
そう思って、ようやく実感する。
自分は本当に空にやって来たのだと。
ニアを助けるために――――
「あー、くそっ」
胸がむかむかしてきた。
ニアがあのレイナスとかいう男に向かって微笑んでいるのを見た時から。
ニアを守るのは自分しかいないと思ってた。というよりは、他の誰にも守らせたくなどなかった。
それなのに。
彼女が一番守ってもらいたかったのは自分なんかじゃなくて、あの男だったんだ――――
「……なんかかっこ悪ぃな」
ザードの憂鬱な心など露知らず、空は相変わらず爽やかで穏やかだった………。


終わり


→あとがき
ザードの淡い恋心(笑)
微妙にレイニア話になっちゃってますが、そこは横へ置いといて下さい。メインはザード。
んじゃあ、次こそは本当にレイニアを書こうかなぁ、とか思ってたり思ってなかったりトカ(←ゲームが違うっ!!)

 

 

inserted by FC2 system